コロナ禍で厳しい状況が続く販売業界ですが、家にいても買い物ができるこの時代にお店でモノを買うメリットはなんでしょう。
オンラインショッピングとの最大の違いは、販売員の存在です。
「この人から買ってよかった」と思われる魅力的な販売員は、豊富な専門知識や人柄、自信を兼ね備えています。
本記事ではこれからアパレル店員を目指す方、アパレルで働いている方におすすめの国家資格、「販売士検定」をご紹介します。
勉強方法やメリットについて予習しておきましょう。
アパレル店員には何か決まった資格などもいりません。以外に誰でもなれる職業でもあり、業界内にもいろんな人が沢山います。 その中でアパレル店員に向いている特徴はた[…]
◇◆販売士検定ってどんな資格?
1級から3級まで、それぞれの等級に合格することで「販売士」の資格を取得できます。
各級の対象職種とレベル感について見てみましょう。
1級 | 経営者 店長レベル | 中小小売業の経営に対する高度な知識を取得 企業に必要な経営戦略全般に活用 |
2級 | 管理職 中堅幹部レベル | 小売業の専門的な知識を取得 販促や人材育成といったマネジメントに活用 |
3級 | 販売員 売場担当レベル | 販売員としての基礎知識を取得 主に販売や基本業務に活用 |
■大規模/一般小売店
■製造業/サービス業/卸売業
販売士という名前のとおり、小売店での販売担当やサービス業で活躍できる資格です。
小売や販売は知っていても、流通については馴染みない方も多いのではないでしょうか。
簡単に説明すると、流通とは生産者から消費者へ商品を届けるまでの一連の流れで、両者の間を取りもつ役割が卸売業や小売店です。
アパレル販売員を目指す方も商品仕入れや物流について知っておくと、他部署と連携する際や発注業務で役立ちます。
流通の仕事に興味がある方にもおすすめです。
セレクトショップの店頭に並んでいる商品は、企画、製造されて店頭に並ぶまで多くの人たちが関わっています。 アパレル業界には多くの職種があり、中にはあまり知られていないものもありま[…]
◇◆販売士検定取得による3つのメリット
ここでは、販売士検定資格取得におけるメリットを1つずつ具体的に解説していきます!
日本の小売業は接客のレベルが高いです。
オンラインでの買い物や他のテナントとの差別化をはかり、商品を購入してもらうためには、専門性の高い販売スキルが求められます。
★身だしなみ
★マナー
★礼儀
★態度
★正しい敬語
このような基本知識に、商品知識・販売技術といった基本能力を合わせたものが接客力です。
ネットでは知ることができない新鮮な情報を提供することで、この店舗に来て正解だったという信頼関係が築けます。
信頼できる販売員からまた買いたいという心理は、お客様の再来店=店舗の顧客化につながります。
ファッションが好きでアパレル販売の仕事をしているけど、顧客を増やして売り上げを上げる方法が分からない!そんな悩みの声を良く聞きます。アパレル店員は売り上げにより評価やお給料が変わります[…]
■接客販売
■クレームの対応
■商品・備品の発注業務
■VMD(ヴィジュアル・マーチャンダイジング)ディスプレイや売り場の演出
■顧客にお礼のお手紙や新作の入荷案内
一般的には上記のようなイメージの方が多いのではないでしょうか。
それでは次に、経営者の視点をプラスして見てみましょう。
★人材の育成
★無駄な残業代や光熱費、運送費など不要なコストの削減
★利益を出すための経営分析
★各種法令の順守
販売に限らず、店舗や会社が存続していくためには販売員も経営者のような視点を持つことが必要です。
①「人を育てる」
②「利益を出す」
③「ルールを守る」
この3つを徹底して結果を出すことで、業種に限らず求められる人材になります。
販売士の資格を持っていると、アパレル業界への就職や転職が有利になる可能性があります。
取得を推奨している企業も多く、私の働いていたアパレルブランドでは店長職は3級の取得が必要でした。
受講料の補助や資格手当の出る企業もあるので、就職後に挑戦しても良いかもしれません。
転職の際は幹部・管理職への昇進条件であったり、マネジメント能力の証明となる2級以上を持っていると有利になることがあります。
この章のまとめは以下の3つです。
デザイナーやパタンナー、MDなど、ファッション業界には数多くの業種があります。ファッション業界で働くことを志したら、まずそのステップとして"ファッション専門学校"という選択肢が見えてく[…]
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◇◆販売士検定の受験日や受験料は?
試験は2月と7月、年に二回ありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し、2020年7月第86回の試験が中止となりました。
2021年7月からはペーパー試験からテストセンターのパソコンで受験する、ネット試験に変更となりました。
今までは決まった場所、日時で実施されていましたが、自分でスケジュールを調整できるようになりました。
試験時間や会場に変更点がありますが、2021年5月時点での最新情報は以下のとおりです。
料金 | 試験時間 | 合格基準 | |
1級 | 7,850円(税込) | ||
2級 | 5,770円(税込) | 60分 ※2021年より変更 | 平均70点以上 1科目ごとの得点 50点以上 |
3級 | 4,200円(税込) |
変更になる場合もあるので、詳しい情報は商工会議所のHPをご確認ください。
◇◆販売士検定の合格率と難易度
3級:“受験者数10,284名 実受験者数9,613名 合格者数6,863名 合格率71.4%”
2級:“受験者数 5,608名 実受験者数5,149名 合格者数3,778名 合格率73.4%”
1級:“受験者数 836名 実受験者数 695名 合格者数 174名 合格率25.0%”
参考:商工会議所の検定「販売士」(2021年5月23日)
3級:“受験者数8,860名 実受験者数8,125名 合格者数4,441名 合格率54.7%”
2級:“受験者数5,472名 実受験者数4,916名 合格者数2,979名 合格率60.6%”
1級:“受験者数1,133名 実受験者数 909名 合格者数 194名 合格率21.3%”
参考:商工会議所の検定「販売士」(2021年5月23日)
直近の試験では、3級と2級の合格率は70%を超えています。
受験者数と合格者数、合格率も前年に比べ伸びていますが、1級は合格率25%と狭き門です。
民間資格ではありますが合格率だけなら国家資格に匹敵します。
こうして比べてみると2級までは比較的に合格しやすいと言えます。
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★販売士検定の過去問題例【3つの級のレベル感は?】
1級から3級の出題科目は5科目で同じですが、学習する量と難易度が大きく変わります。
各級の過去問から例題を見てみましょう。
ショッピングセンター(正誤問題)
次のア~オは、ショッピングセンター(SC)について述べている。
正しいものには1を、誤っているものには2を、答案用紙の所定欄にマークしなさい。(15点)
ア SCは、バイヤーが商業集積の効果を意図して計画的に造成した施設である。
イ 一般社団法人日本ショッピングセンター協会では、SCとは「1つの単位として計画、開発、所有、管理運営される商業・サービス施設の集合体で、駐車場として備えるもの」と定義している。
ウ 一般社団法人日本ショッピングセンター協会の基準では、SCが備える条件の1つとして小売業の店舗面積を1,000㎡以上としている。
エ 一般社団法人日本ショッピングセンター協会の基準では、SCはキーテナントを除いて10店舗以上のテナントが含まれている施設である。
オ キーテナントとは、SCなどで顧客誘引の中心的役割を果たしている店舗のことである。
- ★3級問題の解答はこちらをクリック
- 【ア:2】
【イ:1】
【ウ:2】
【エ:1】
【オ:1】
流通の原理(正誤問題)
次のア~オは、流通の原理について述べている。
正しいものには1を、誤っているものには2を、答案用紙の所定欄にマークしなさい。
ア 取引総数単純化の原理とは、生産者と消費者の間に流通業者が介在することにより、介在しない場合に比べて取引総数が減少し、それにより流通費用が節約されるという原理である。
イ 集中貯蔵の原理とは、流通業者が在庫を集中的に保有すれば、各生産者が分散的に保有する場合の緩和よりも在庫数量が増加し、それにより中通費用が節約されるという原理である。
ウ 集中貯蔵の原理は、流通業者の中でも特に小売業者の存在意義を説明する場合によく用いられる。
エ 情報縮約・整合の原理とは、流通部門が生産者と消費者双方の情報を縮約・整合することで、生産と消費部門の取引は効率的になり、それにより流通費用が節約されるという原理である。
オ 規模の経済の原理とは、流通業者が多数の生産者から大量の生産物を収集することで、生産量1単位当たりの流通費用が節約されるという原理である。
- ★2級問題の解答はこちらをクリック
- 【ア:1】
【イ:2】
【ウ:2】
【エ:1】
【オ:1】
大型店出店規制の変遷(正誤問題)
次のア~オは、大型店出店規制の変遷について述べている。
正しいものには1を、誤っているものには2を、答案用紙の所定欄にマークしなさい。(15点)
ア 大規模小売店舗法(大店法)の規制緩和の流れの中で、中心市街地および商店街の活性化は、商業問題としてだけでなく、貧困問題として取り組むことが求められるようになった。
イ 大規模小売店舗立地法(大店立地法)は、「周辺の生活環境の保全」という観点から大型店の出店を調整する法律である。
ウ 大規模小売店舗法(大店法)の制定によって、大規模小売店舗立地法(大店立地法)は廃止された。
エ 1998年の改正都市計画法では、市町村が独自に都市計画区域の用途地域に「市街化調整区域」を指定できるようになった。
オ 2007年の改正都市計画法では、延べ床面積が、10,000㎡超の大規模集客施設が立地できる用途地域を「商業地域」に限定した。
- ★1級問題の解答はこちらをクリック
- 【ア:2】
【イ:1】
【ウ:2】
【エ:2】
【オ:2】
同科目でも級が上がるごとに、より高度な専門知識が必要になってきます。
専門用語が多いので業界未経験であれば3級から段階的に取ることをおすすめします。
1級は面接がありましたが、2015年の改訂に伴い廃止されて難易度は少し下がりました。
しかし、他の級より情報量が圧倒的に多く、記述式の問題もあるので、スケジュールに余裕を持ち学習を進めていく必要があります。
◇◆合格するためのおすすめ勉強方法
学習方法は大きくわけて2つあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
★販売士検定【独学での勉強方法】
1級・2級・3級全てにおいて、基本的な学習方法は、公式テキストを読み、過去問を解きます。
試験は公式テキストから70%から90%近く出題されます。
そのため、内容を正しく理解することができれば独学でも合格できます。
テキストは以下のリンクから購入できます。
公式テキストと過去問を繰り返し解き、インプットとアウトプットを交互に行うことで記憶を定着させ地力をつけていくことになります。
学習時間を自分で管理できる、費用を安くおさえたいという方に向いています。
関連の教本や過去問はたくさんあるので、相性の良い教材を選ぶといいでしょう。
★通信講座や講習会を受講
学習時間のコントロールや自分で調べるのが苦手な方には、講習会や指定の通信講座を受けるという方法もあります。
指定の機関以外で資格スクールを探す場合は、費用や学習内容を比較して、ぜひ合格の近道になるものを選んでください。
商工会議所で実施される講習会は各5教科のカリキュラムがあります。
8割以上の受講と予備試験に合格することで、本試験で科目が1つ免除されます。
受講の詳しい内容は【日本販売士協会のHP】をご確認下さい。
自分に合う学習スタイルを見つけて、ぜひ検定に挑戦してみてください。
◇◆販売士検定と合わせて取りたい3つの資格
小売業の基本を学べる販売士検定以外にも、役立つ資格を紹介します。
色彩検定では、アパレルやファッション関連で必須の色彩感覚を学べます。
色彩について学ぶことで提案時の具体的な説得力やキャリアアップ、キャリアチェンジに活かせます。
色彩検定とは、文部科学省後援の公的資格で、色に関する資格はいくつかありますが、色彩検定は主にファッションに特化している資格になります。初めて色彩関連の試験を受ける方におすすめの検定で、[…]
ビジネスマネジャー検定は管理職に必要な知識を学習できます。
初めはスタッフからスタートすることが多い販売業ですが、店長やさらに上の役職であるスーパーバイザーを目指す人には、ぜひ取得をおすすめしたい資格です。
現在はコロナで落ち着いていますが、中国をはじめとしたインバウンド対策ができればハイブランドで働く際にも役立ちます。
外国人のお客様が来たときでも積極的にアプローチができれば店舗で重宝されます。
この3つの資格があれば、さらにアパレル販売員としてのスキルアップにつながります。
ファッションビジネス能力検定をご存知でしょうか?ファッションの専門学校や、家庭科の専攻がある学校に通っていた人には馴染みがあると思います。世間的に広くは知られていませんが、実は[…]
\アパレル派遣ならアパレル・ファッション業界に特化した【アパレル派遣なび】/
◇◆販売士検定を取得してプロの販売士へ【まとめ】
いかがでしたでしょうか。
本記事では小売業、流通業唯一の公的資格である「販売士検定」について紹介しました。
■販売業、流通業の公的資格
■資格取得でプロの視点、経営者の視点が持てる
■就職や転職に有利になる場合がある
■2021年からはネット試験に変更
■学習方法は独学/講習、通信講座を活用して合格できる資格です
プロの資格を持つ販売員がいる店舗は、セルフサービス化が進む中でも選ばれ続けます。
資格を持っているだけでは接客力は磨かれていきませんが、学習した内容を活かすことができれば、アパレル業界のキャリアで必ず役に立つでしょう。
これからアパレル業界に入りたいあなたも、すでにアパレル業界で働いているあなたも、正しい知識を身につけることで、より自信を持ってパフォーマンスができるようになります。
本記事が「販売士検定」に興味を持っていただく一助となれば幸いです。
アパレル業界の勤めている方、目指している方にとって業界の魅力や、やりがいは何だろうと考える方も多いでしょう。特に専門職でなければアルバイトからでも始められる店舗販売員は、誰もが1度は通[…]
デザイナーやパタンナー、MDなど、ファッション業界には数多くの業種があります。ファッション業界で働くことを志したら、まずそのステップとして"ファッション専門学校"という選択肢が見えてく[…]